模型制作記録簿

模型趣味のアレコレを綴っていきます。

光硬化パテについて

現在私が造型のメインとして使用している光硬化パテ。

私はタミヤ製のものを使っており、UVライト(でも可能ですが)ではなく通常の可視光線でも硬化出来るのが気に入っております。

今や自分の作業には欠かせない、そんな光硬化パテのことをつらつらと書いてみます。

 

まずいきなりですがコストの話(笑)。

※全て税込価格

タミヤ 光硬化パテ(27W 約2分)

 34g 1,320円

比較参考として、

タミヤ ポリエステルパテ(約1時間で硬化)

 40g 616円

 120g 1,078円

 硬化剤(単品)4g 385円

よく上がるのがこの二者の比較でしょう。ポリパテ40g 616円に対して光硬化パテが若干少ない34gの1,320円。倍もするし!と敬遠される主な理由はだいたいこの辺(笑)。

120g版に至っては、量は4倍近くで少しお安い1,078円ともなれば光硬化パテを選ぶ理由が無い、とまで言われます。よく硬化剤が足りず別途買い足す必要があったとしてもコスト的にはまだ勝てない。

 

そのうえで今回は個人的に感じたメリットを書いて、プレゼンテーションしてみたいと思います。

 

私が感じるメリットとして

①適量内なら10秒もあれば硬化するため作業が早く、また追加盛りができる 

②ヒケない。またプラを侵食しない 

③自分にとって使いやすい粘度 

④硬化後は瞬着パテと比べて削りやすい…といったところです。

※実はポリパテを使ったことがありません。なので切削感や実際の使用量に対する硬化時間、硬化剤ひとつで何gまで保つのか?といったことを知らず、比較に出せませんのでご容赦ください。決して「使ってたけど嫌になったから」とかではございません。

 

①とにかく硬化が早い、追加盛りできる

これは光硬化パテというジャンルの最大の武器ですね。2分で硬化とありますが、作業でチョコチョコ盛る程度なら15秒程で硬化します。注意事項として一度に2mm以上盛り付けるとパテ内部が硬化しないとありますが、これは外からの光が内部まで届きにくくなるからだと思われます。2mm以下で硬化させてさらに盛り付けていくことは可能です。

なお、タミヤ光硬化パテはUVライトといった特殊な光源を必要としませんとあります。少し調べた限りでは、どうも光硬化パテはその組成次第で必要とする光の波長が異なるらしいです。そのため製品によってはUVライトのような波長の場合深部にまで光が届かず、表層だけが固まる場合もあるようです。

自分はUVライトではなくコレを使って硬化させてます。

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NEEWER CN-160

光量はダイヤルで可変し、最大で660lm。これは一般的なデスクライトが200lm台なので約4倍近い光量となります。本来バッテリー式の撮影用ライトですが、有線アダプタ(別売)を付けることで電池切れとは無縁になります。

光硬化パテ使用開始当初は、携帯用デスクライトを使ってました。光量的には問題なかったのですが、撮影用にと買ったCN-160で硬化させたら表面のベト付きが減ったため「強い光源は大事かもしれない」とこちらばかり使ってます。

追加盛りとは、一度盛って硬化したパテに対してさらに盛ることなのですが、例えばエポキシパテの場合硬化したエポキシパテへさらに新しくエポキシパテを乗せただけですと、追加した部分が剥離してしまいます。

光硬化パテは盛れば盛るほど塊になっていくため造成に向いていると思います。

②ヒケない。またプラを侵食しない。

これはある意味弱点ともなりえるのですが、ポリパテやラッカーパテが溶剤成分の揮発によって硬化するため体積が減る=ヒケるのに対し、光硬化パテは溶剤成分を含まないため、ヒケはないといっても良いレベルです。

溶剤成分でプラの表面を侵食して定着するのではないため、少量だったり盛る面積が小さいとプラから剥離することがあります。大抵は番手の少ないヤスリで表面を少し荒して「足付け」してやることで解決しますが、この侵食しない性質を利用してキットへ盛り付けた後にコキンと剥がして(※)単独で整形したり(再度貼るには模型用接着剤で貼れます)、出来合いのシリコン型へ塗って造成することも可能です。

※複雑な形状の箇所へ盛った場合剥がせなくなることがあります。

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UVレジンアクセサリー向けの半球シリコン型へパテを塗り込み、色々な曲率の半球を作りました。厚みは正確なところはあやふやですが、1mm以上2mm以下程度に塗りたくりました。最初はシリコン型の穴を塗りつぶす程度に、一旦硬化させて次は厚盛りを意識して。

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分かりにくいですが、直径は同じで球としての高さ(曲率)が違う2つの半球。キットでは曲率がキツく、プラ板で下駄履かせて厚みを出したものの後から「ミサイルハッチの曲面に馴染んでない」と気になり出してアクセ用シリコン型を調べて購入。なんとか自分の欲しい曲率の半球を作ることができました。

③自分にとって使いやすい粘度

言葉での説明は難しいですね。瞬着パテより粘度があり、歯磨き粉よりやや粘度が低い(笑)。平面へ取り出したパテの山へ爪楊枝を突っ込みかき上げると2mm球程のパテが先端に絡めることができるくらい。同じことを瞬着パテでやるとしたたってしまいますね。

また爪楊枝でチクチクやると表面が均されていきます。盛りたい量が合っていると、爪楊枝で捏ね回すだけでそこそこ表面が均されてくるくらいです。

おそらく似たようなことは他のパテ類でも可能でしょうが、多分硬化完了までに平らに伸びてしまったりと盛った直後の形状を保つのは難しいかもしれませんが、光硬化パテのいいところはそこそこ盛った状態を保ってくれること、「上手く盛れた」と思ったらすぐ光源にかざしてやればその状態で硬化してくれる。反対に強い光を当てるまでは時間がかかっても固まらないので、盛りが気に入らなければ拭ってしまえます。ラッカーパテを隙間(使用条件を超える深い溝は不可)へ充填し、あぶれた部分を溶剤を染み込ませたウエスや綿棒で拭う…などの「合わせ技」も、光硬化パテなら単独で可能です。

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シリコン板の上へパテを出し、シリコンから剥がしたもの。そのままぺリンとやりました。

ちなみに最近までこの方法でパテ出ししてたのですが、ある日面倒に感じてマスキングテープで代用するように…

④削りやすい

瞬着パテは、その硬度と接着力による強固さが良い所ですが、反面先に周辺のプラ材が削れてしまうといった面もあります。タミヤ光硬化パテの場合は「プラ(PS)>光硬化パテ」という硬度で設計されているそうで、当たりを柔らかくして削っていけば光硬化パテのみが削れていきます。

ヤスリ掛けでひとつ注意があるとすれば、表層に未硬化成分=ベトつきがあったままヤスリを当てると目詰まりしやすいというところでしょうか。ベトつきが目に絡むとその状態で硬化するため、サンドペーパー系ですとまず切削能力が落ち、払っても取れません。特にスポンジヤスリ系を真っ先に使うのはコスト的におすすめしません(笑)。表面を軽くカンナ掛けして未硬化成分を取り除く、ラッカー/アクリル溶剤で表面を拭き取ってから各種ヤスリを使用すると良いと思います。もっとも、①で紹介したデスクライト以上の光源を使ってやることで、硬化時間の短縮と未硬化成分を減らすことは可能です。

なお、タミヤ光硬化パテはオレンジ色のペーストですが、光に当たる時間が長くなるとレモン色のように鮮やかな色味が抜けて白っぽくなっていきます。

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中央のオレンジ色が10秒程度光に当てて硬化したもの。右上や下にあるレモン色が日光で1日他っておいたり、室内光でも1週間程放置しておくとこんな感じの色味になります。やや半透明。

 

デメリット…という程深刻ではないけど、弱点ともいえること。

・硬化後でも溶剤の影響を若干受ける

おそらく塗装のノリのためなのか、若干溶剤の影響を受けます。例えばサフを筆塗り(私はエアブラシ環境を持たないので)すると表面に小さな穴が開くことがあります。これは何回かに分けてパテ盛りした際に入った気泡が原因で、薄皮一枚分表層下にあった気泡が、溶剤で壁を溶かされて穴として顕在化してしまったのでしょう。爪楊枝でグリグリやってたので…今ならスパチュラとかを使ってるかも。

塗装前の表面処理や下地処理の段階で気づけば良いですが…という意味であえて「弱点」としました。

・平滑面での食い付きが弱い

メリット②でも触れましたが、溶剤を含まないためヒケない代わりにラッカーパテやポリパテと比べると若干食い付きが弱く、横方向の力が加わると剥離することがあります。小さく浅い傷を埋めるには不向きです。

・造形後のボリュームがやや把握しづらい

タミヤ光硬化パテに限れば、硬化後も光を当て続けることで橙→レモンイエローと白っぽくなっていきますが、若干半透明でもあるためモノとしてのボリューム感が写真を撮った時に伝わりづらい傾向にあります。

そんな時はサフ塗って均一化してしまいますが、人によってはそのあたりどう思うか気になるところです。

 

長々と書きましたが、いかがだったでしょうか。

「使ったことないし高いからよくわからん」みたいなところから「ちょっと使ってみようかな?」とお試しいただけると、もしかしたら新たな扉が開く…かもしれません(笑)

これは単純に私がそうでしたので、皆さんもいかがでしょうといったところです。特にタミヤさんからステマを依頼されてる訳でもございません(笑)。

可能性のひとつとして、お試しあれ。